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日本の中間管理職はギリギリの状態だ

なぜ、心が折れる職場になってしまうのか?(前編)

■失敗リスクを恐れ、部下に頼れない

 中間管理職が本来のマネジャー業務だけでなく、現場仕事も抱え込んでいる背景には、「部下に仕事を任せたくても任せられない」「部下を頼れない」という管理職側の心情も影響しているようです。

 管理職の人たちの言い分はこうです。「部下に任せようと思っても、部下が思うように育ってくれない」「最近の若い社員は受け身的で、自分からは動こうとしない」──だから現場仕事も自分でやらざるを得ない、という論理です。ベテラン管理職たちは、「自分たちが若手の頃はもっと伸び伸び仕事をして、いろんなことにチャレンジしたものだ。今の若い社員も、もっと主体的にチャレンジしてほしい」と言います。

 しかし、なぜ若手社員がそうなっているのかと言えば、今の中間管理職自身が受け身的であることに加えて、任せたくても失敗リスクを恐れて任せられない状況に、若手社員が敏感に反応した結果であるとも言えるのです。

 たしかに中間管理職が新入社員の頃は、チャレンジして失敗しても、それが許される寛容さが職場にはありました。しかし、近年は企業の短期業績重視の方針から、失敗がなかなか許されない雰囲気になっているのは先ほども述べた通りです。

 その代わり、リスクを取らず、無難に物事を進めようとする傾向が強まっています。たとえば、若手社員が新しい発想で企画を提案しても、課長や部長のチェックを経るうちに、リスクの少ない無難な企画への書き換えを指示されたり、却下されたりするということも起きています。

 リスクを恐れてチャレンジしない中間管理職を見て、敏感な若手社員はこう思っているはずです。「チャレンジして失敗でもしたら、自分の評価が下がるだけ。それならやらないほうが得なんじゃないか」。その結果、受け身的で自分からは動かない若手社員に代わって、中間管理職自身が現場仕事に手を動かすことになっているわけです。

 会社から短期的な成果を求められるなか、「取引額の大きな優良顧客を未熟な部下に任せられない」「部下に任せても結果がすぐに出ない。だったら自分でやってしまおう」と考える中間管理職も多いでしょう。

 部下に仕事を任せるよりも、経験豊富な自分がやったほうが早く確実にできるし、人に任せて失敗するリスクを考えれば、自分でやったほうが安心だというわけです。

 短期的に見れば、プレイングマネジャーが自ら現場仕事を担当することで、手っ取り早く数字を上げることができるでしょう。しかし、現場仕事に注力すればするほど、マネジメント業務にかけられる時間と労力は減り、部下育成が疎かになってしまいます。

 部下が育たないために、若手社員や新人社員がやるべき仕事をいつまでも手放せず、ますます多忙を極めて自分の首を絞めるという状況に陥っています。

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前川 孝雄

まえかわ たかお

(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師

紀伊國屋書店 新宿本店、紀伊國屋書店 梅田本店、

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「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベスト新書)

大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「上司力研修」「育成風土を創る社内報」「人を活かす経営者ゼミ」などを手掛け、約300社で人が育つ現場づくりを支援。自らも年間100本超の講演、TV番組、雑誌に出演。YAHOO! 「前川孝雄の人が育つ会社研究室」など連載も数多く持つ。


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  • 前川 孝雄
  • 2016.08.09